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お大師様のことば(六)
大正大学名誉教授
文学博士・東京成就院住職
福田 亮成
これは、「福州の観察使に与えて入京すの啓」の一文であります。夙夜とは、朝早くから夜おそくまでの時間のことで、責任は重く、しかし人間は弱い。よって早朝より夜おそくまで、陰は寸陰のこと、わずかの時間を惜しむ、という意味であります。
困難な航海の末に、やっと赤岸鎮に到着しましたが、地方役人がいぶかり船を封鎖し、乗員のすべてが浜辺に捉えられている状況のなかで、大使葛野麿になりかわり草した「大使、福州の観察使に与うるがための書」が威力を発揮し、いよいよ大使一行は長安への長い旅が許されることになったわけであります。しかし、どうしたことでありましょう。お大師さまお一人に入京の許可が許されなかったわけであります。そこで、今度は、ご自身のために草したのがこの文章であります。
留学の任期は二十年、尋ね求める教えは大乗である。そして、この文章が続きます。大きな期待と不安の中での、一つのアクシデントに直面されたお大師さまの、まさしく憔悴(しょうすい)の言葉でありました。
「伏して願はくは彼(か)の弘道(こうどう)を顧(かえり)みて、入京することを得せしめよ。然らば則ち早く名徳(めいとく)を尋(たず)ねて速(すみ)やかに所志を遂げん」と。その後のことにつきましては、『御請来目録』に聞くことにいたしましょう。
「空海去(い)んし延暦廿三年をもって、命を留学の末に銜(ふく)んで(命令されて)、津を万里の外に問う。その年の臘月(ろうげつ)(十二月)長安に到ることを得たり。(中略)ここにすなわち諸寺に周遊して師依(しい)を訪い択ぶに、幸い青竜寺の潅頂阿闍梨、法の号恵果(いみなけいか)和尚に遇うてもって師主となす」、と。すばらしい出会いがまっているのであります。
六大新報 第四一九三号 掲載