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お大師様のことば(十九)
大正大学名誉教授
文学博士・東京成就院住職
福田 亮成
お大師さまの人間観察は実にリアルです。それは、仏さまと私達とは本来一つであるはずなのですが、私達の心は煩悩におおわれて、仏である自分と煩悩におおわれている自分との間に大きな乖離があるというのであります。私達の本当の悩みどころは、ここにあります。釈尊のおさとりは、大乗仏教の展開により、すべての人びとに解放されました。すべての人びとは仏になる可能性(仏性)が平等にあたえられていることを宣言されました。また菩薩達の登場は、すべての人びとを救済しようとする誓願が、まんべんなく私達にそそがれている、というのであります。無限に活動されている菩薩達が、私達一人一人の救済に心をくだかれているということを考えてみますと、煩悩の底に沈んで苦しんでいる人びとに、大きな勇気と希望とをあたえることになるにちがいありません。
お大師さまは、人間とは“染浄の心”の持主であるとし、その染の方向、即ち妄心流転の生き方をすれば、衆生染汗の身というよりなく、その浄の方向、即ち開発照悟に向う意思を定めるならば、諸仏の清浄法身だというのであります。むろん、私達の生きる方向は開発照悟のそれでなければなりません。
そして、その開発照悟の行為を示して
誓願します 一切のもろもろの悪をのぞきます
誓願します 最高の教えを学びます
誓願します すべての人びとを救います
すべての人びとを速やかに無上なるさとりをになっている仏の境界をさとらせます
と。このことは、実に善なる人間関係、社会を作りあげることに繋がります。
六大新報 第四二二六号 掲載