諸の弟子らに語(つ)ぐ。
およそ出家修道はもと仏果を期す。
あにいわんや人間(じんかん)少々の果をや。

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お大師様のことば お大師様のことば

お大師様のことば(九十一)

大正大学名誉教授・種智院大学客員教授
東京成就院長老


福田 亮成



 人間の全存在を器(うつわ)、即ち、ものを入れおさめるもの、という言葉で表現いたします。世間的にも、人間を表現する云い方の一つに、”あの人は器の大きな人だ”というように、度量の大きな人、心が広く、人をよくうけいれる性質の持ち主といいます。
 仏教では、器とあわせて機根という言葉が使われます。機根とは、仏の教えにふれて精神的な能力が発揮されること、というように解されます。
 この文章の主語は水ですが、それを仏の教えと重ねてみますと、教えとは、それを受けとる人びとの宗教的な能力によって、どのように展開し、変化していくのか、ということでありましょう。その実際は、インド・中国・日本の仏教の歴史と、各々の教説の主調に如実にあらわれております。お大師さまの教えすら、同じ著述を読んでいながら、人びとの腹におさまるものは、少しずつ相違してきます。人間が生きる日常生活の中ですら、他人ひとの気持を正しく受取ることのなんとむずかしいことか。それには他人ひとの気持を受取るための修練が必要です。カウンセリングという言葉があります。それはカウンセラーが悩みをもつ人の相談に乗り、その悩みを解消することでありますが、カウンセラーの基本的な条件は、いかに人の悩みを聞きとるか、というところにあるようで、そのための修練が大切なようです。
 お大師さまの教えを学ぶことも同じです。いかに著述を精確に読み、それを生活の中で咀嚼し、そのなかから何を受け取っていくか、お大師さまの考えた世界は広く、かつ深いためになかなかむずかしいものがあります。お大師さまがご覧になっている全風景を共に見たいのが私の念願であります。


六大新報 第四四一三号 掲載



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