お大師様のことば(九十六)
大正大学名誉教授・種智院大学客員教授
東京成就院長老
福田 亮成
お大師さまは、唐より帰朝のある時期、乙訓寺の別当職に就いたことがありました。この文は、その折に寺の境内に実った
恐らく弘仁三年の秋、お大師さま三十九歳の頃であったと考えられます。
因みに詩文の全体を紹介しましょう。すばらしいものです。
詩七音
美なるに
星の如く玉の如くして
黄金の質なり
香味は
定んで是れ天上の王母か
(桃や李(すもも)はめずらしい果実であるが寒さには弱い。どうしてみかんが霜にあって美しくなるのにくらべられようか。みかんは星のように、玉のようにして黄金色が本来のこと、その香味は供え物にみち、そこにとどまることがあろうか。はなはだあやしく、珍なり。どこからもたらしたものか、それは天上の王母の里からの贈りものにちがいない)
現在、柑橘類とはハッサク、ナツミカン、ユズ、ミカン等が考えられますが、献上されたものはどのようなものであったのか不明ですが、”小柑子六小
六大新報 第四四二五号 掲載