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お大師様のことば お大師様のことば

お大師様のことば(二)

大正大学名誉教授
文学博士・東京成就院住職
福田 亮成

 この句は、『三教指帰』の序文の中に、ある一人の沙門との出会いによりまして虚空蔵聞持の法の伝授を受けられ、法によって虚空蔵菩薩の真言を一百万遍誦すれば、一切の教法の文義を暗記することができるということを信じて、精進努力の結果、その得ることができた心境を、実に単純に表現されたものであります。

 私は、この言葉はお大師様の悟りの境界を述べたものではないかと愚考するものであります。

 初句の「谷響(たにひびき)を惜(おし)まず」とは、谷がこだまする、そのことが惜まず、即ち虚しくなく、そのまま戻ってきた。即ち修行の結果がそのままに得ることができた、ということでしょうか。次句の「明星(みょうじょう)来影(らいえい)す」とは、明星を虚空蔵菩薩に仮託して、来影す、応現された、というわけであります。私もそれに異議をはさむつもりはありませんが、もう少し自由に考えてみたいと思います。

 お大師さまは修業された場所として阿国(徳島)の大滝の嶽、土州(高知)の室戸崎をあげておられます。初句の「谷響を惜まず」とは、大滝の嶽に立って見わたした昼の世界でありましょう。谷川の流れの声が突然に大音響として聞こえてきた。次句の「明星来影す」とは、室戸崎の先端に立って遠く海上を見はるかす夜の世界でありましょう。明けの明星がピカッと輝いた、ということに違いありません。

 悟りの境界をあらわそうとする時、得てしてそれは、自然に託して文学的に表現される場合が多いが、まさしく、この句はお大師さまのそれに違いなかろうと思うのであります。

六大新報 平成二十一年四月十五日 第四一八二号 掲載



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