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お大師様のことば お大師様のことば

お大師様のことば(四)

大正大学名誉教授
文学博士・東京成就院住職
福田 亮成

 この言葉は、お大師様が七年半の沈黙をやぶって、遣唐使の一員として名を列(つら)ねることになった理由を述べたものである。お大師様が乗船することになった遣唐使の一行は、出発直後に失敗してしまい、再度船団を組み直したもので、その新しいメンバーの一人として登場したのであったが、その理由が“時に人に乏しきに逢(あ)って”というわけである。即ち、他に人がいなかったので、留学生の一人として推挙された、ということであろう。

 そこには、どのような事情がかくれているのであろうか。

 後に福州長渓県の赤岸鎮に漂着した折に、大使の藤原葛野麿(かどのまろ)は、同船しているお大師様にむかって、「切愁の今なり、抑々(そもそも)、大徳(だいとく)は筆の主なり、書を呈せよ」と呼びかけている。ここにも、お大師様が乗船した理由とおぼしきものがみえている。

 困難な遣唐使船の航海には、その無事を願って験者(げんじゃ)としての僧を乗船させる慣(なら)わしがあり、験者としてのお大師様が缺員(けついん)を補(おぎな)うかたちで突然に選ばれたのであろうか。『三教指帰』の仮名乞児の修行者としての描写を思い出してほしい。

 いや、後の引用文のごとく、「大徳は筆の主なり」と呼びかけられたごとく、中国語に堪能(たんのう)であり、文章家であったことからの招聘(しょうへい)だったのであろうか。

 そのようなことより、お大師様ご自身が入唐に強い期待を持ち、日々に準備を怠(おこた)ることがなかったにちがいない。すでに密教に到着し、さらに新しい本格的な密教というものの全貌が見え隠れしていたのであろう。恵果阿闍梨の潅頂は、その探求の結論であったということができるであろう。

六大新報 第四一八七号 掲載



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