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お大師様のことば お大師様のことば

お大師様のことば(十)

大正大学名誉教授
文学博士・東京成就院住職
福田 亮成

 この文は、「越州の節度使に与えて内外の経書を求むる啓」の一文であります。文末に「元和元年四月□日、日本国求法沙門、空海啓す」とありますから、お大師さまが日本への帰国の途中、長安で蒐集されました内外の経書を、越州におきましてさらに充実しようとの意図のもとに書かれたものであります。唐歴の元和元年とは、日本歴の大同元年(八〇六)のことで、お大師さまは三十三歳の時でありました。いまだ中国大陸の旅の途中であったようであります。文章の意味は、“時代と人とが一致すれば好い時が到来し、さらに道を弘める立派な人があらわれば、教えはきわまりなく弘まるものである。しかし、人と時とが矛盾するところがあれば、教えは地に落ちてしまうものである”ということでありましょう。お大師さまにとりましては、人とは実に恵果阿闍梨さまであり、あるいは、法を授かりましたご自身の自覚であったとも考えられます。時につきましては、お大師さまが在唐中、徳宗、順宗、憲宗の皇帝がかわります。日本に帰国してからも三代の天皇にかかわることになったわけですから、けっして平安だったわけではありませんでした。

 後の『秘蔵宝鑰(ひぞうほうやく)』の十四問答の主題は、人と時についてであります。“時に増減あり、法に正像(しょうぞう)あり”といってから、“像法千載(ぞうほうせんねん)の外には護禁修得(ごきんしゅうとく)のもの少し。今にあたっては時(とき)はこれ濁悪(じょくあく)、人(ひと)は根劣鈍(こんれつどん)たり”といっております。

 日本仏教は、平安中頃から末法思想が強く自覚され愚鈍なる凡夫観、そして辺土観などがプラスされ、鎌倉仏教への展開を大きく規定してくることになります。人と時の問題は、現代の私達の重要なテーマです。

六大新報 第四二〇三号 掲載



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