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お大師様のことば お大師様のことば

お大師様のことば(二十五)

大正大学名誉教授
文学博士・東京成就院住職
福田 亮成

 この文は、「諸の有縁うえんしゅうすすめて秘密ひみつ法蔵ほうぞうたてまつるべき文」の一文であります。幸いに「弘仁六年四月一日」の記がありますから、お大師さま四十二歳の時に発せられてもののようです。お大師さまは、三十四歳の時にはすでに帰朝されているのですから、約十年ほど経過していることになります。この文の趣旨は、次の文によって明確です。「今機縁きえんしゅうのために読講宣揚どくこうせんようして仏恩ぶっとんほうじ奉らんと欲う。しかれどもなおその本多からず。法流擁滞ほうりゅうようたい(さえぎられている)す」とあるがごときであります。

 お大師さまが帰朝されて約十年の状況を考えてみますと、まず密教関係の資料がいまだ日本の仏教界にゆきわたっていないという現実に直面していたことがわかります。この書簡には、「秘密の法蔵合わせて三十五巻」のリストと、その原本とが添えられていたはずであります。ちなみに、その三十五巻とは、『大日経』七巻、『金剛頂大教王経』三巻、『金剛頂瑜伽中略出念誦経』四巻、『大日経疏』二十巻、『菩提心論』一巻のことのようです。いずれもがお大師さまの著作に縦横に引証されるものばかりであります。

 さらに、「ここをもって弟子の僧康守こうしゅ安行あんぎょう等をつかわして彼の方に発赴はっぷせしむ」とありますように遠方の旅にたくみな弟子達を遠くへ派遣したようであります。

 幸いにも、『高野雑筆集』の巻上には、同趣旨の文が陸州の徳一菩薩、下野の広智禅師(この方は天台の円仁の師)、甲州の藤原太守、常州の藤原使君等にまで送られていたようです。それが関東にまで及んでいたということです。この時期、伝教大師さまが関東に旅をしていることは興味深いですね。

六大新報 第四二四一号 掲載



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